11月6日(月)

 というわけでまったく進まないのであった。
 しかも今、頭の中は星型多面体と美女とガウディでいっぱいなのである。
 「デカビロに 近くて遠き 夢想かな」
 俳句を作っている場合ではないのである。

 うだうだしていてもしょうがないのでしぶしぶ、書斎と化した喫茶店へいく。
 いつもの席を老夫婦にとられているので、仕方なく隣りの席に。なぜ見知らぬ青年にガンを飛ばされたのか、老夫婦は永遠に分からないままであろう。

 今日は心機一転、右下の、今まで手をつけていなかった「5C(言い忘れたが、15枚の用紙には左上から1A~5Cの番号が振ってあるのである)」の地域を埋めていくことにする。

 このエリアのみどころはなんといっても、ほどけそうでほどけない2択チェーンである。解いてみないとなんのことか分かるまい。もちろん、チェックをしてみないと狙いどおりの解け方をするか分からないので、偉そうなことは言えないが。現時点で成功率70%くらいといったところだろうか。

 5Bから5Cにかけての広い領域には「雲をつかむ」と題したパートを設置。鉛筆は猛烈なスピードで動くのに、なぜか全然解けていかない、という奇妙さが売りである。
 難易度重視派の諸氏にはこの手応えのなさは嫌われるだろう、と思うが、遊園地でいえば「お化け屋敷」とか「ミラーハウス」みたいな部分なので、まあ、解き味に奥行きを持たせるためにはなくてはならないものなのであった。
 もちろん絶叫マシンも沢山用意してあるからそういうのが好きな人はそれで遊んでください、という多様性がこのサイズには必要な気がする。

 これはデザイン段階で構想していたとおりに作ったのでテストの必要はまったくないのだが、ついつい試したくなり無意味に数字を書き写してプレイしてみる。思ったとおり指先の疲労度のみがたまっていくのに全然解けて行かない、嫌な解き味であった。合格。

 というわけで、5Cの地域の数字入れを1日で完了する。
 かなりの達成感に満足し、某女史宅へ帰宅。

 某女史に電話すると、荷物が重いから迎えに来い、とのたまわるので、仕方なく最寄駅まで出向く。荷物などまったく持っていなかったが、要するに帰り道の話し相手がほしかったらしい。
 やれやれ。

 ありあわせで夕食を作って二人で食し、食休みにちらちらとチェックをしていると、用紙と用紙の切れ目の部分に重大ミスを発見。ラインが紙と紙の間で違う風に引かれている、という、かなり致命的なものである。うーん参った。なんでこんなことに。
 しかしまあ、実を言ってしまうと、6・3・3と通知票に書かれつづけた「注意力散漫でうっかりミスが多く、落ち着きがない」男にとって、こんなことは日常茶飯事なのである。
 よくこんな男にパズルなんて作らせるよなこの編集部は。
 いや、まあそれはおいておいて、多くの失敗の末編み出した秘伝の法、「あとで考えよう法」を用いてここは乗り切ろう。
 解けるかどうかはさておき、数字にハタンのないように適当に修正しておく。そしてそのあたり一面を蛍光ペンでぬりつぶしておくのであった。そして、チェックのとき、慎重に慎重を期して別解を避けていくと、結構なんとかなるもんなのであった。蛍光ペンはコピーしても色が出ないので何かと便利なのである。
 というわけで、結局のところ単なる先延ばしに過ぎない秘術を使ってミスを忘れ去ろうとする26歳パズル作家のいい加減な夜なのであった。