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樹村の家から近い、町田駅から歩いて3分のところに事務所を借りた。プレハブ2階建ての長屋の2階で、1階は喫茶店、ラーメン屋、焼き鳥屋だった。10坪で7万円の家賃。周りは畑で向こうにラブホテルが見えるのどかな場所である。住所は相模原市になっていて思いきりイナカにいる気分。

秋に事務所を借り、私は印刷会社を辞め、冬に会社設立の手続きをとった。決めたとたんにバタバタと事は動いていったのだった。

そんな動きのときに出したのが「N,G1」(124ページ、480円)だ。「ニコリの合体本」を略して「NG」とし、創刊準備号と創刊号、2号の3冊をそのままくっつけて1冊にした本である。バックナンバーの需要が相変わらず多かったのでメンドくさい、まとめてしまえといってまとめたのだった。パズルは時事的なものではないので、雑誌といいながら、どの号も旬なのであった。

1983年(昭和58年)1月。株式会社ニコリとする。カッコいいなあ。役場で出された書類に書き込んでいったとき、「定款」のところに「パズルの制作。パズル出版物の…」と書いたら蹴られた。パズルという単語はないという。そんなあ。「図書の印刷および出版云々」と書き直された。なんだ。フツーの会社じゃねえか。ニコリはフツーの会社じゃないんだぜ、と思ったが、そんなところで意地を張る必要もないのであった。会社ってハンコをたくさんつくらなければいけないんだ、と思った。

夢と希望に溢れていた、と言いたいのだが、なんだかところてんのように押し出されたというか、何も考えずに会社をつくってもいいんだ、と思った。