1981年は3号(52ページ、280円)、4号(56ページ、280円)、5号(60ページ、280円)の3冊を出している。

この年の1月に「本の雑誌社」の目黒さんから電話がかかってきた。

椎名誠さんが朝日新聞に毎週1回連載している「椎名誠のマガジンジャック」で、ニコリを取り上げたいと言っている、というのである。

うれしいですけど何でまた?

好きだからというだけでつくっちゃって、しかも直(直接委託販売)でやっているのがおかしくて気に入った、というのである。

そのコラムの内容はこうだった。

[椎名誠のマガジンジャック]


大手出版社の出す雑誌にどうしても批判的になってしまうのは、ひとたび売れそうな分野が見つかるとみんなでドバッとそこを攻める、というような安易で安直で安全コツコツ路線というような、なにか全面的に「安安的世界」をつくっているからである。

本来それはアベコベであるような気がする。大手だからこそ思い切って新しいマーケットを切り開いていくべきだ、と思うのだけれど「わしらはそんなヤバイことあまりしたくないもんね」と、大手は常に醜く膨れた腹をさすり、脂肪に厚い瞼(まぶた)の奧でいつも怪しい含み笑いを浮かべているのである(ちょっと偏見がつよすぎるかなあ)。

が、ともかく今回はミニコミならではのゲリラ型新ジャンル雑誌を紹介したい。「パズル通信ニコリ」というまあつまりはパズルの専門誌である。中を見るとパズルマニアがパズルが好きで好きでたまらなくてそれで作っちゃいました、ハーイ。というような、それはそれで素人雑誌としての安易さに満ちているのだが、いままでにない分野にとにかくマニアの熱意だけで挑戦しちゃう、というのはなかなか楽しい。パズル雑誌なのではじめからおわりまでパズルばっかり。それも自作のパズルばかりだから一方的な間違い出題もあるらしく、手元にある2号では創刊号のマチガイをいろいろおわび訂正しているのもおかしい。間違いの問題に正しい答えが出てくるわけはなく、ちくしょうおかしいなあ、むずかしいなあ、なんて頭をひねっているマニアの読者を思いうかべたりするとおかしくなってしまう。一部の書店へ持ち込み販売の、まったくの手づくり雑誌だけれど、これが売れても大手は荒らすなよ。

(朝日新聞1981年1月28日付朝刊より)


何も考えずに、周りのことには全く目を向けずにつくってしまった雑誌が客観的に評価されてしまい、しかもあまりに好意的だったので、こそばゆいような、ただただびっくりするだけであった。

そうなんだあ。ニコリって、出版業界から見ると変わっているんだあ。

変な自信がついたことは確かだった。でもまだ本腰をいれているかというと、それは疑問でありました。